『こころ』を読んで
高校生の時にこの作品に触れたとき、自分が恐ろしい怪物になるのではないかという予感がした。
人間の罪とか、逆らえない運命でも言うのか、いつ自分が闇に呑まれていくのかわからず、怖くなった。
二度目にこの作品を通して読んだのは、今日である。
今回の読書で得られたものは、単なる教科書に書いてある近代知識人の自我とかそういったものではなく、1つにはこの作品の面白さだ。
最初から最後まで、先生の罪とは何か、という問いをずっと意識させながら、退屈させないのが漱石の巧さなのである。
そして、真面目さという、もはや読書をする人にしかもう持ちえないのではないかという物事に対する姿勢が、この作品には一貫して存在する。
決してこの作品の色調は明るくはない。
けれども、単なる自殺の物語と言っていいほど単純なものでもなければ、倫理的な哲学ばかりを含んだ難解な書物でもない。
誰の中にも本当はあったはずだ。
他でもないこの作品にあるタイトル通りの、この作品を味わう「こころ」を。
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